2016-11-11

第6話「一人飲みの女性客」/歩のあゆむ道

なごや栄二丁目新聞社 なご弁新聞 歩のあゆむ道

歩のあゆむ道第6話「一人飲みの女性客」

歩のあゆむ道の概要については「なご弁新聞掲載中の1話完結短編小説「歩のあゆむ道」バックナンバー大公開!」にてご確認下さい。

第6話「一人飲みの女性客」

上司の口癖「売上貢献!」、後輩の口癖「俺は、めんどいので」。こんな状態で板挟みにあっていた入社2年目の大川歩(おおかわ・あゆむ)は、近頃仕事へのやる気がとんと失せていた。1週間前に高校時代のテニス部のメンバーと久しぶりに食事会をしたとき、2つ下の後輩が1ヶ月前に仕事を辞めた話を聞かされた。短大を出た後に部品製造の仕事をして約2年は働いたが、今ではニートとなっている。

そんな後輩の姿を見て、仕事は思いのほか簡単に辞められるのかもしれない、と歩は考えるようになってしまった。思わず脳裏に『辞表』の2文字が浮かび上がった。

伏見通りをまっすぐ歩き、地下鉄丸の内駅の8番出口を通り過ぎたとき、ふと歩の鼻に味噌の匂いが入り込んだ。匂いの方向へ向かうと、『然』と書かれた小さな串カツ屋を見つけた。木の扉を横に開くと、カウンター席があった。

「いらっしゃい」

白髪交じりの短髪で、一見頑固そうに見える男性が迎えた。この店は、どうやら一人で営んでいるようだ。

『串カツ 1本90円』という貼り紙を見た歩は、とても安いと思い、3本注文した。味噌とソースが選択できる。生まれ育ちが名古屋ということもあり、味噌を選んだ。梅酒を注文して、一人で細々と飲んでいると、

「何だが、元気がないようですね」

隣席の女性に声をかけられた。黒い長髪に自然なメイクの容姿端麗な女性は、歩より何歳かは上のようで、日本酒を冷やで飲んでいる。

「分かります?」

「顔に出てますよ。『僕はとっても疲れてます』って。会社で何かあったんでしょ? 私も。営業成績で上司にうるさく言われて。何度辞めたいって思ったか」

「でも頑張るしかありませんよね」

24歳の歩は、この女性に大人の色気と親近感を覚えた。今はこの場を乗り切るしかないのだと、歩は深く考えさせられたのであった。

※なご弁新聞26号(9月15日 発行)掲載分

第7話「マスターの過去」

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この小説は、1人の若手営業マンの日常を描いています。会社の上司や同僚、営業先やその途中で出会う人との人間模様を1話完結の短編小説で描きます。「なご弁新聞」学生記者 川内雅樹

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投稿者 Keita Fukushima

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